地震保険の一部損の基準と事例を解説!被害程度別の給付金額も紹介

地震大国の日本では、多くの方が地震保険に加入されています。しかし、いざ被災したときに、給付金がどのように支払われるのかご存知でしょうか?

実は、地震保険の給付金は、被害の程度に応じて4段階に区分され、それぞれ支払われる金額が異なります。中でも「一部損」は、最も認定件数が多い状況です。そのため、多くの被災者にとって重要な区分と言えます。

しかし、一部損の認定基準は意外と知られておらず、建物と家財で基準が異なることや、認定されやすいダメージとされにくいダメージの違いについて、把握しておく必要があります。

本記事では、地震保険の一部損認定について、わかりやすく解説します。一部損の基準や支払い給付金の計算方法、認定されやすいダメージなどを知ることで、いざという時に慌てずに対応できるようになるでしょう。

一部損について知りたい方、一部損の認定に不安を感じている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

目次

地震保険の被害認定で最も多い「一部損」の基準

地震保険の被害認定で最も多い「一部損」の基準

地震保険の被害認定では、被害の程度に応じて一部損、小半損、大半損、全損の4段階に分類されます。その中でも、地震による被害で最も認定件数が多いのが「一部損」です。ここでは、地震保険における一部損の認定基準について、建物と家財それぞれの観点から解説します。

建物の場合

建物が一部損と認定されるのは、地震による被害が比較的軽微な場合です。具体的には、以下のような基準が適用されます。

  • 主要構造部の地震による損傷が限定的である
  • 非構造部材の地震による損傷が一部にとどまる


主要構造部とは、建物の骨組みを形成する柱、梁、壁、屋根などを指します。これらに発生した地震によるひび割れや亀裂が、建物の構造的な安全性に大きな影響を与えない範囲であれば、地震保険では一部損と判断されます。

また、非構造部材である内装材や外装材、建具などに生じた破損や脱落が、部分的な範囲にとどまる場合も、一部損の対象となります。

家財の場合

家財の場合

地震により家財が一部損と認定されるのは、以下のような基準に該当する場合です。

  1. 地震により家財の一部に破損や汚損などの被害が発生している
  2. 地震による家財全体の損害割合が10%以上30%未満である※


家財の一部損認定では、被害を受けた家財の種類や数量、損傷の程度を詳細に確認する必要があります。これらの情報を基に、家財の修理や交換にかかる費用が算出されます。

以下は、家財の一部損に該当する具体的な被害例です。

  • 家具の一部が破損した場合
  • 家電製品の一部が故障した場合
  • 衣類や寝具などに汚れや破れが生じた場合


一部損認定されるような被害は、日常生活に一定の影響を及ぼすものの、全ての家財が失われたわけではありません。

※参照 https://www.sonysonpo.co.jp/fire/earthquake_003.html

地震保険の一部損での給付金

地震保険の一部損での給付金

ここでは、地震保険で一部損と認定された場合の給付金について、具体的な計算方法と支払い例を交えて解説していきます。一部損の基準や支払割合、建物と家財それぞれの給付金の算出方法などを詳しく見ていきましょう。

地震保険の給付金額と支払割合

地震保険の給付金額は、契約時に設定した給付金額に基づいて決定されます。ただし、実際に支払われる金額は、被害の程度に応じて給付金額に一定の割合を乗じた額となります。この割合を支払割合と呼びます。

地震保険の支払割合は、以下の4段階に分かれています。

損傷の種類損傷の割合支払われる給付金額
全損建物の時価額の50%以上給付金額の100%
大半損建物の時価額の40%~50%未満給付金額の60%
小半損建物の時価額の20%~40%未満給付金額の30%
一部損建物の時価額の3%~20%未満給付金額の5%

一部損の場合、支払割合は5%と最も低くなっています。しかし、一部損は地震保険の被害認定の中で最も頻繁に適用される基準であり、重要な補償となります。

【計算方法と支払い例】一部損の場合の支払給付金はいくら?

一部損の場合の給付金は、建物と家財のそれぞれについて個別に計算されます。

よくある計算方法の一例は以下のとおりです。しかし、計算方法は保険会社や保険商品によって異なるため、詳細については保険会社に直接確認しましょう。

支払い金額計算方法
建物の一部損の支払い金額建物の支払給付金 = 建物の給付金額 × 5%
家財の一部損の支払い金額家財の支払給付金 = 家財の給付金額 × 5%

ここで支払い例を一つ挙げてみましょう。建物の給付金額が1,500万円、家財の給付金額が800万円の場合、一部損の支払給付金は以下のように算出されます。

1,500万円 × 5%(建物の一部損の支払い金額) + 800万円 × 5%家財の一部損の支払い金額 = 115万円

このように、一部損と認定されると、建物と家財を合わせて115万円の支払給付金を受け取ることができます。

地震保険で一部損と認定されやすい被害

地震保険で一部損と認定されやすい被害

一部損と認定されやすい建物の被害について、具体的な事例を交えて解説します。

以下のような被害に加えて、様々な被害が地震保険の一部損の対象となります。

  • 地震による基礎のひび割れ
  • 外壁のひび割れ
  • 屋根のダメージ
  • 主要構造部以外の箇所のひび割れ

地震による基礎のひび割れ

建物の基礎に発生したひび割れは、地震保険の一部損と認定されやすい被害の一つです。地震の揺れによって、基礎コンクリートにひび割れが生じることがあります。特に、以下のような場合は注意が必要です。

  • 基礎の隅角部にひび割れが発生している
  • ひび割れの幅が0.2mm以上ある
  • ひび割れが長さ1m以上に及んでいる


これらの地震によるひび割れは、建物の構造的な安全性に直接的な影響を与えるものではないことがほとんどです。しかし、放置すると徐々に広がり、建物の耐久性を低下させる可能性があります。

そのため、基礎のひび割れは、早期に補修することが重要です。専門家による詳細な調査を行い、適切な補修方法を選択することが求められます。一部損の認定を受けることで、給付金を活用して補修費用を賄うことができるでしょう。

外壁のひび割れ

地震の影響で外壁に発生したひび割れも、一部損の対象となることがあります。

具体的には以下のような場合に、一部損以上の損害と認定される可能性があります。

  • 外壁に大きなひび割れや剥がれがある
  • 外壁の一部が浮いている
  • 外壁の継ぎ目や角の部分に破損がある
  • 外壁が外側に大きく膨らんでいる
  • 外壁の一部が落下したり、崩れたりしている


地震によってこれらのダメージが外壁に発生した場合には、給付金を申請できる可能性があるため、給付金を申請する価値があるでしょう。

※参照 https://www.sonpo.or.jp/insurance/jishin/ctuevu00000001fo-att/nintei_kijyun.pdf

屋根(瓦・スレート)のダメージ

屋根(瓦・スレート)のダメージ

地震の影響によって、屋根材である瓦やスレートに生じたダメージも、一部損の対象となります。以下のような被害が代表的です。

  • 瓦やスレートのずれや脱落
  • 棟部分の破損や変形
  • 屋根材の割れや欠損


これらの被害は、屋根の防水性能を低下させ、雨漏りを引き起こす原因となります。また、二次被害として、強風によって脱落した屋根材が、近隣へ被害を与えるおそれもあります。

屋根のダメージを放置すると、建物内部の損傷や劣化が進行する可能性があります。早期の補修が必要不可欠です。一部損の認定を受けることで、給付金を活用して適切な補修を行うことができるでしょう。

主要構造部以外の箇所のひび割れ

主要構造部(柱、梁、耐力壁など)以外の箇所に発生した地震によるひび割れも、一部損の対象となることがあります。例えば、以下のような部位のひび割れが該当します。

  • 内装材(壁、天井、床など)のひび割れ
  • 建具(ドア、窓など)周辺のひび割れ
  • 設備配管(水道管、ガス管など)周辺のひび割れ


主要構造部以外のひび割れは、居住性や機能性を低下させる要因となります。また、地震によるひび割れを放置すると、将来的に補修が困難になる可能性もあります。

地震保険で一部損と認定されにくい被害

地震保険で一部損と認定されにくい被害

一見すると地震による深刻な被害に見える場合でも、一部損と認定されないケースがあります。ここでは、地震で発生した構造に影響のないひび割れ、外装材の剥がれや被害、内装材の被害など、一部損と認定されにくいダメージについて詳しく解説します。

構造に影響のないひび割れ(ヘアークラック、乾燥によるひび割れ)

建物の壁や柱、梁などに発生する地震によるひび割れの中には、構造的な安全性に影響を与えないものがあります。代表的なのが、ヘアークラックと呼ばれる極細のひび割れです。

ヘアークラックは、コンクリートの乾燥収縮や温度変化によって生じる表面的なひび割れで、非常に細いものを指します。これらのひび割れは、建物の構造的な強度には影響を与えないため、地震保険の一部損の認定対象とはなりにくいのです。

外装材の剥がれや被害

地震によって、建物の外装材が剥がれたり、破損したりすることがあります。例えば、以下のようなケースが挙げられます。

  • タイルやモルタルの剥がれ
  • サイディングの割れや脱落
  • 外壁塗装の剥離やひび割れ


これらの外装材の被害は、見た目に影響するだけでなく、建物の防水性能を低下させる要因となります。しかし、外装材自体は建物の構造を直接支える部材ではありません。そのため、地震保険の一部損の認定対象とはなりにくい傾向にあります。

内装材の被害

地震の揺れによって、建物の内装材に被害が生じることがあります。具体的には、以下のようなダメージが挙げられます。

  • 壁紙や天井材の剥がれやひび割れ
  • 床材(フローリング、畳など)の剥がれや変形
  • 建具(ドア、襖など)の歪みや破損


これらの内装材の被害は、居住性や美観を損ねる要因となります。しかし、建物の構造的な安全性とは直接関係がないため、一部損の認定対象となることは少ないのです。

納得できない!一部損認定への対処法

納得できない!一部損認定への対処法

火災保険の損害認定で、一部損と認定されたものの、その判断に納得がいかない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、一部損認定に納得がいかない場合の具体的な対処法について解説します。

一部損認定に納得しにくいケース

以下のような状況では、一部損認定に納得がいかないことがあります。

  1. 損傷範囲や修繕費用の見積もりに関する認識の違い
    契約者と保険会社の間で、損傷範囲や修繕費用の見積もりについて認識の違いがある場合。
  2. 損害の程度に対して認定が軽微である
    損害の程度に対して、一部損認定が軽微すぎると感じる場合。

このように、損害割合や損傷範囲、修繕費用の見積もりなどによって、一部損認定に納得がいかない可能性があるでしょう。

対処法

対処法

一部損認定に納得がいかない場合、以下の対処法を検討しましょう。

  1.  保険会社への再調査依頼
    一部損認定に納得がいかない場合、まずは保険会社に再調査を依頼しましょう。不服の理由を明確にし、根拠となる資料を準備します。担当者に再調査の必要性を訴え、粘り強く交渉を続けることが重要です。
  2. そんぽADRセンター」への相談
    保険会社との交渉で解決しない場合、公正な立場で調停する「そんぽADRセンター」に相談しましょう。そんぽADRセンターは、損害保険に関するトラブルについて、公正な立場で調停を行う機関です。専門家が無料で対応し、保険会社の対応に法的拘束力があるため、効果的な解決が期待できます。
  3. 火災保険申請サポートへの依頼
    損害認定や保険会社とのやり取りを専門家に依頼することで、適正な損害認定を目指せます。交渉、書類作成、修繕業者手配などを一括で対応してもらえますが、費用対効果を見極めることが大切です。

一部損認定に納得がいかない場合、まずは保険会社への再調査依頼から始めましょう。それでも解決しない場合は、そんぽADRセンターへの相談や、火災保険申請サポートの活用も検討してください。適切な対処法を選び、粘り強く交渉を続けることで、納得のいく損害認定を目指しましょう。

なお、地震保険の補償内容や請求方法については以下で詳しく説明しています。詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

地震保険の一部損についてのまとめ

地震保険の一部損についてのまとめ

地震保険の被害認定は、一部損、小半損、大半損、全損の4段階に分けられ、一部損が最も多く認定されています。一部損の認定基準は建物と家財で異なります。

建物の場合は主要構造部の損害割合が3%以上20%未満、家財の場合は家財の損害割合が10%以上30%未満が一部損と認定されます。支払給付金は給付金額の5%となります。

一部損と認定されやすい被害には、基礎や外壁のひび割れ、屋根のダメージなどがあります。しかし、構造に影響のない被害は一部損として認定されにくい傾向にあります。

認定結果に納得がいかない場合は、保険会社への再調査依頼や「そんぽADRセンター」への相談など、適切な対処法を選ぶことが重要です。

地震保険の一部損について理解を深め、いざという時に備えておきましょう。

もし地震で建物に被害が出た場合は、火災保険申請サポート「修復ナビ」をご利用ください。修復ナビでは、弁護士監修のもと、無料の現地調査や給付金の受け取りをサポートし、高い給付金額の実現を目指します。

地震保険の一部損認定に関するご相談は、ぜひお気軽に修復ナビにお問い合わせください。

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