火災保険の「汚損」補償の定義とは?対象となる事故の具体例を紹介

火災保険の特約としてつけられる「破損・汚損保険」。本当に必要なのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。しかし、この補償でカバーできる事故は非常に幅広く、大切な建物や家財を守るために有効な手段になりえます。

この記事では、火災保険の破損汚損特約に該当する事故のうち、「汚損」について詳しくご紹介します。汚損事故の具体例を上げ、火災保険を利用できるかどうかを見ていきましょう。

目次

火災保険で補償される「汚損」とは

火災保険で補償される「汚損」とは

火災保険で補償される「汚損」は、不測かつ突発的な事故により、建物・家財が傷ついたり汚れたりして本来の機能を失ったり、外見を著しく損なってしまったりした状態を指します。

 破損・汚損は形状が変わるかどうかという点で区別されます。 

名称物体の形状事故例
破損変わる傷つく・歪む・壊れるなど
汚損変わらない傷つく・汚れる・シミがつくなど

破損事故の例や例外となるケースについては、以下をお読みください。

修復ナビ
火災保険の「破損」補償はどこまでカバーされる?補償事例について解説 | 火災保険・地震保険の申請サポー... 火災保険の「破損汚損特約」は、不測かつ突発的な事故により、建物や家財が破損もしくは汚損した際、給付金を受け取れるというものです。火災保険は、火災以外の自然災害だ...

汚損・破損補償の対象となる建物と家財の定義は以下の通りです。

補償の対象   定義
建物被保険者が住居としてのみ使用している家屋とその敷地内及び建物の付属物(賃貸を除く)・建物を構成している屋根や壁、床・門、塀、カーポートなど建物の付属物
・建物に直接備え付けた家具や浴槽、流し
家財被保険者及び家計を同一とする家族が所有する価値のある物品・家具、家電製品
・家庭用の食器、日用品、衣服
・絵画、貴金属、骨董品

 補償対象を理解するにあたって注意すべきなのは、「自身が所有する建物・家財に限る」という点です。

賃貸住宅を汚損した場合は住宅の所有者である家主へ賠償しなくてはなりません。その場合は「借家人賠償責任保険」が適用されます。

また、他人の建物や家財を汚損した場合は、「個人賠償責任保険」を利用できます。

汚損補償の対象となる事例

補償の対象となる火災保険汚損事例

上記の点を踏まえて、火災保険の破損汚損特約において給付金を受け取れる汚損事故の事例を建物、家財それぞれについてご紹介します。

【建物】汚損の補償対象となる事例

【建物】火災保険で汚損の補償対象となる事例

建物の汚損事故の事例をご紹介します。なお、先述の通り対象となる「建物」は自身の持ち家に限られます。賃貸や他人の家を汚してしまったという場合は補償できませんので注意が必要です。

水道栓を閉め忘れて水がもれ、部屋全体が濡れた

水道栓を閉め忘れて水がもれ、部屋全体が濡れた

水濡れが部屋全体に及ぶと非常に大きな損害になります。そのため、火災保険での補償があると安心です。

通常の火災保険では、水害による水濡れ被害しか補償されません。また、「水濡れ特約」は給排水管の故障など、被保険者に過失がない水濡れを想定したものです。

破損汚損特約では、自身のうっかりミスによる水濡れ被害を補償できます。数百万円の給付金が支払われたケースもあり、汚損補償の中でも特に重要な項目です。

カーポートのシャッターに落書きをされた

カーポートは建物の外にありますが、敷地内にあるため、「建物」を対象とした破損・汚損保険で補償されます。

なお、スプレーでの落書きは火災保険の「物体の落下・飛来・衝突」の対象になる場合があります。スプレーの塗料という「飛来物」がカーポートに当たって損失が生じたと見なされるためです。

落書きをした相手が分かれば、相手側の個人賠償責任保険での補償も可能です。

キッチンで火事を起こして壁がすすで汚れてしまった

火災による損害は火災保険から給付金を受け取ることができますが、壁のすす汚れは「汚損事故」に該当するため、破損汚損特約がなければ補償の対象外となる場合があります。このように破損汚損特約には、通常の火災保険で補償しきれない損害をカバーできるというメリットがあります。 

ただし、火災による臭いは破損汚損特約でも補償できません。臭いがついただけでは、壁の機能や美観が損なわれたとはいえないためです。

また、臭いは人によって感覚が異なること、時間の経過により薄れていくことから、損害額を算出するのは困難です。そのため、臭いは原則として火災保険の適用外となっています

【家財】汚損の補償対象となる事例

【家財】火災保険で汚損の補償対象となる事例

家財の汚損事故についても具体例を見ていきましょう。

無垢材の食器棚にコーヒーをこぼしてシミができてしまった

無垢材の食器棚にコーヒーをこぼしてシミができてしまった

食器棚は重いですが動かすことができるため、家財に相当します。そのため、食器棚が著しく汚損した場合は、火災保険の破損汚損特約から補償可能です。なお、作り付けの食器棚は建物の付属品と見なされます。そのため、建物の破損汚損特約が適用されます。

部屋に飾っていた絵画に子供が落書きをした

部屋に飾っていた絵画に子供が落書きをした

絵画は「家財」、子供のいたずらは「不測かつ突発的な事故」と判断されます。

ただし、30万円以上の美術品は、保険加入時に申請、保険証券に明記が必要です。また、保険会社によっては契約が別途必要になる場合もあります。高価な美術品を所有している場合は動産総合保険の加入を検討しましょう。

ブランドのバッグを盗まれ、汚されてしまった

盗難による汚損は破損汚損特約で補償できる場合とできない場合があります。原則として、盗難に伴う損害は盗難保険が適用され、破損汚損特約では補償されません。

しかし、契約内容によっては、破損汚損特約で補償される可能性があります。具体的には以下のようなケースが考えられます。

  • 破損汚損特約の中に「盗難」が入っている
  • 盗難保険で盗難に伴う損害が補償されている

保険会社や契約内容によって違うので、保険証券を確認する、もしくは保険会社に直接問い合わせてみましょう。

汚損補償の対象外となる事例

火災保険で汚損補償の対象外となる事例

上記でご紹介した通り、日常起こりうる事故のかなり多くの範囲を、破損汚損特約で補償することができます。しかし、だからこそ例外を見落としてしまうこともあります。

例外となるケースを見ていきましょう。 

  • メガネやスマートフォンなどの汚損
  • 故意の汚損
  • 自宅の敷地外での汚損
  • 軽微な汚損
  • 経年劣化による汚損
  • ペットによる汚損
  • 修理費用が免責金額を下回る場合

具体例をご紹介します。

自宅内でスマートフォンをお風呂に落とし、動かなくなった

自宅内でスマートフォンをお風呂に落とし、動かなくなった

自宅内での家財の汚損事故であっても、スマートフォンやメガネなどは火災保険で給付金を受け取ることはできません。壊れやすい家財は事故件数が多いため、破損汚損特約において免責項目に設定されているからです。スマートフォンは「モバイル保険」で補償ができますので、特に破損・汚損のリスクが高い方は加入しておくことをお勧めします。

その他、免責項目に含まれる家財には以下のようなものがあります。※保険会社により異なります。

  • メガネ、コンタクトレンズ
  • 義足、義歯
  • 携帯できる電化製品の周辺機器
  • ドローンやラジコン
  • 電球や蛍光管などの管球類
  • 動物、植物

壁紙張替えの給付金ほしさにわざと壁を汚した

汚す目的で、もしくは汚れると分かっていて故意に建物や家財を汚損した場合、給付金を受け取ることはできません。火災保険はそもそも、「不測かつ突発的な事故」が補償範囲であるため、予測できたり、故意の汚損は補償外になります。

また、故意の汚損行為を隠して給付金を申請するのは不正請求に当たり、詐欺罪で立件される可能性があります。

たとえ訴えられなかったとしても、保険会社の信頼を著しく損ねる行為です。絶対に行ってはいけません。

室内に飾っていた書画を人に見せるために持ち出し、出先で汚した

普段建物内で使用・保管している家財であっても、敷地外に持ち出して汚損してしまった場合は補償の対象外となります。

先述の通り、美術品には専用の保険があります。特に持ち出す可能性のあるものについては個別の保険加入も検討しましょう。

床にアルコールをこぼして少し色が抜けてしまった

建物内の事故であっても、損害の程度が軽微で使用に問題がない場合は補償されません。汚損によって耐久性や安全性が損なわれる、二次被害の恐れがあると判断された場合にのみ、補償の対象となります。

ただし、「軽微」の判断基準は保険会社によって異なります。「この程度の汚損では給付金はもらえないだろう」と諦めるのではなく、まずは保険会社に相談してみることも必要です。

築年数の古いアパートで、日焼けによりフローリングが退色した

築年数の古いアパートで、日焼けによりフローリングが退色した

火災保険の補償対象は、あくまで「不測の事故」です。築年数による経年劣化は含まれません。

しかし、汚損の原因が経年劣化か不測の事故かを判断するのが難しいケースもあります。その場合は保険会社もしくは火災保険申請サポートサービスに相談してみると良いでしょう。

ペットの犬がお漏らしをしてカーペットを汚した

ペットの犬がお漏らしをしてカーペットを汚した

ペットによる汚損は火災保険の破損汚損特約において補償対象外となります。動物により建物や家財が汚されることは容易に想像できるため、「不測かつ突発的な事故」に当たらないと見なされるからです。

修理費用が免責金額を下回った

修理費用が免責金額を下回った場合は補償されません。免責金額とは、「保険会社が支払いの義務を負わない金額」のことです。

火災保険の免責タイプには、エクセス方式とフランチャイズ方式の2つがあるので、どちらの方式に加入しているかを知っておく必要があるでしょう。

エクセス方式とは火災保険の加入時に、損保会社と契約者の双方で取り決めた免責額を超えた分の給付金を受け取れるタイプの保険です。エクセス方式では、免責額を5万円と設定した場合、被害額が30万円だと給付金は25万円受け取れます。

フランチャイズ方式では免責金額20万円で設定した場合、被害額が20万円以上であれば全額給付金を受け取れます。

エクセス型フランチャイズ型
あらかじめ決められた金額を超えた分が給付金として支払われる損害額が20万円以上の場合、給付金が全額支払われる

免責金額を高く設定すると、それだけ保険料が下がりますが、補償されないケースが増えてしまいます。補償内容と保険料のバランスを見ながら、適した免責金額を決めることが重要です。

破損汚損特約の重要性

火災保険の破損汚損特約の重要性

汚損事故に対する補償は火災保険では特約となります。もちろん特約をつければつけるほど補償は手厚くなりますが、毎月の保険料が上がるため、躊躇してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、破損汚損補償は火災保険の特約の中でも特に有用であるといえます。その重要性と、加入したほうが良い方の特徴について解説します。

破損汚損特約の範囲

先述の通り、破損汚損特約は非常に多くの日常事故に対応しています。建物や家具、家電だけではなく、食器や衣服など、毎日使用する家財の多くが補償対象となるため、活用機会の多い特約です。

一般的な火災保険は、自然災害の被害しかカバーできません。破損汚損事故特約をつけることで不測の事態から生じる損害の多くを補填でき、日常生活に安心感が生まれます。

破損汚損の支払い率の多さ

破損汚損の支払い率の多さ

上述の通り、破損汚損特約は、オプション扱いながら活用機会が非常に高いです。

三井住友海上の公表した火災保険の使用用途を見ると、30.7%が破損汚損事故となっています。「風災、雹災、雪災」の55.7%に次いで多く、「火災・落雷、破裂・爆発」の4.0%を大きく上回ります。

破損汚損特約をつけて、「暮らしの事故」と「自然災害」両方の備えを万全にすることで、日常起こりえる損害の多くをカバーすることができます。

また、破損汚損特約は何度利用しても保険料は上がりません。日常起こりうる事故を負担を増やすことなく何度でもカバーできると考えると、大変お得な特約であるといえるでしょう。

破損汚損特約でもらえる給付金 

破損汚損特約でもらえる給付金の額は、以下の要素によって異なります。

  • 契約内容
  • 免責金額
  • 損害額

原則として、損害額から免責金額を差し引いた額を限度として給付金が支払われます。契約内容によっては、「保険金額の2倍」、「上限30万円」などと定められることもあります。また、「水道管凍結修理費用保険金」のように、特定の事故に対する補償を別の特約でつけることも可能です。

破損汚損特約をつけた方がいい人の特徴

破損汚損特約をつけた方がいい人の特徴

自然災害と異なり、生活上の事故は起きやすい人と起きにくい人がいます。特に事故が起きやすい人は、破損汚損特約をつけることをおすすめします。

また、事故が生じた際の被害額が高い方にも、破損汚損特約は有効です。

破損汚損特約をつけた方が良い方の具体的な特徴は以下の通りです。

  • うっかりミスの多い方
  • 小さな子供がいる
  • 高価な家財を持っている

 破損汚損特約をつけることで保険料は上がりますが、補償範囲が広がり、「暮らしの事故」をカバーできるため、追加で特約をつけても損はないでしょう。

火災保険を利用する流れ

火災保険を利用する流れ

火災保険を利用する流れをご紹介します。破損汚損特約は対象となる範囲が広いものの、例外も多く、また被害の程度によっては給付金が出ないこともあります。給付金を受け取るためには、必要書類を不足なく準備し、正確な被害状況を保険会社に把握してもらうことが重要です。

火災保険を利用して汚損・破損の補償を受ける際の流れを以下にご紹介します。

1.保険会社に連絡する

まずは保険会社に連絡します。以下の点を尋ねられることがありますので、整理しておくと説明がスムーズです。

  • 証券番号
  • 事故の起こった日時、状況
  • 汚損した家財や建物の箇所

2.必要書類を準備する

保険会社の提示する書類や写真を準備します。準備物は保険会社によって異なりますが、以下のものはほぼ間違いなく必要になります。

  • 汚損の状況が分かる写真
  • 見積書

写真ですが、汚損箇所を清掃した後を撮影しても意味がありません。必ず事故発生時から手をつけていない状態の写真を撮っておきましょう。水濡れ被害の場合は、乾く前に写真撮影を済ませておくことが重要です。

火災保険申請サポートサービスに依頼すれば、建物や家財の被害箇所のチェックや必要書類の作成などを行ってもらえます。

3.保険会社の現地調査・審査を受ける

3.保険会社の現地調査・審査を受ける

保険会社から鑑定人が派遣され、実際に家に訪れて汚損状況を確認します。これを「現地調査」といいます。

状況によっては汚損箇所の写真のみで判断し、現地調査を行わないこともあります。現地調査の結果や提出した書類などから審査が行われ、給付の可否や金額が決定されます。
そのため、申請の際に提出する写真や情報が重要になってきます。

4.給付金を受け取る

審査の結果、給付金が受け取れる場合は保険会社から通知が送られてきます。給付金は指定した口座に振り込まれます。

一般的に審査から1ヶ月以内には給付金を受け取ることができるでしょう。

まとめ

火災保険汚損事例のまとめ

火災保険の破損汚損特約で補償される汚損事故について、具体例を挙げながらご紹介しました。日常生活の中で、建物や家財を汚してしまうトラブルは良く起こりえます。特に小さなお子様がいる家庭では、こぼす、汚す、落書きするといった汚損事故は、日常茶飯事といっても良いかもしれません。

火災保険に破損汚損特約をつけていれば、汚損事故が生じた時に給付金を受け取れます。大切な建物や家財を守るためにも、加入を検討しましょう。

 しかし、保険を利用するには保険会社に事故の状況や被害額を正確に伝える必要があります。必要となる写真や書類の種類が多く手続きが煩雑なため、せっかく特約をつけたのに申請ができない、ということにもなりかねません。

そこでおすすめするのが火災保険申請サポートです。火災保険に精通したスタッフが書類の準備から申請までをサポートするため、安心して火災保険を利用できます。

修復ナビでは、火災保険の面倒な調査や書類作成を徹底的にサポートいたします。初期費用や解約手数料などは一切不要、完全成功報酬型のシンプルな料金体系も魅力です。メールやLINEでの無料相談も承っていますので、お気軽にご連絡ください。

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