水道管凍結は火災保険で補償される?水漏れによる被害の補償も併せて解説

水道管凍結は水道管の破損や水漏れを引き起こします。集合住宅の場合は自分の部屋だけではなく、階下にも甚大な被害を及ぼす危険性があります。

水道管凍結の被害に対する修理費用や賠償額は、火災保険で賄うことはできるのでしょうか。今回の記事では、火災保険における水道管凍結の補償の可否や条件、利用の流れについて解説します。

目次

水道管凍結とは

水道管凍結とは

温暖な地域で過ごしている方は「水道管凍結」と聞いてもピンと来ないかもしれません。しかし、水道管凍結は条件が揃えばどのエリアでも起こりえます。

厚生労働省の発表によると、令和5年1月下旬には、水道管凍結・破損による断水戸数が1.4万戸にも上ったということです。12月から3月にかけての寒い冬の時期に、豪雪地域の北海道や東北、北陸に限らず、東京などの首都圏や中国地方、四国地方、九州地方でも給水管破裂による漏水事故が生じています。
※厚生労働省医薬・生活衛生局水道課 令和4年度全国水道関係担当者会議資料より 

まずは水道管凍結の原因と被害について解説します。

水道管が凍結する原因

水道管凍結は、水道管内に残った水が凍ることで起こります。気温が-4℃以下になると凍結が起こりやすくなりますが、風が当たりやすい場所や日陰などでは、より高い温度でも凍結する恐れがあります。

低気温が続く時期も要注意です。最高気温が0℃を下回る日(真冬日)が続くと水道管凍結のリスクが高まります。

また、旅行や出張などで家を空けることが多く、水道管内で水が流れる機会が少なくなることも水道管凍結の原因になるため注意が必要です。

水道管が凍結する可能性が高いポイント

  • 気温が−4℃以下のとき
  • 最高気温が0℃を下回る日(真冬日)が続くとき
  • 寒い時期に数日家にいないとき

水道管が凍結したことで起こる被害

水道管が凍結したことで起こる被害

事故が起こると水が流れなくなるだけではなく、水が氷になって体積が増えるため、水道管の破損につながる恐れがあります。

水道管の破裂

水は凍結すると9%程度体積が増えます。水道管内には常に水が満たされており、ポンプによる圧力がかかっています。

圧力がかかっている中で水道管内の体積が増えると、水道管が耐えられる膨張率を超えてしまい、水道管が破裂してしまうというわけです。水道が使えなくなるため、日常生活に大きな支障が出てしまいます。

水道管の水漏れ

水道管破裂を放置すると、内部の氷が融けた際に水が一気に噴き出し、水漏れが起こります。水道代がかかるだけではなく、壁や床のカビの発生や床下浸水が起こり、集合住宅の場合は階下の住民にまで被害が及ぶ恐れがあります。

水道管が凍結・破裂した際の修理費用

水道管が凍結・破裂した際の修理費用

どの地域でも起こる可能性がある水道管凍結の修理費用は、水道管の場所や損害の大小によって異なります。

水道管が凍結しただけで破裂していない場合は解氷作業のみとなり、修理費用は8,000~15,000円程度です。

しかし、水道管が破裂してしまった場合は水道管修理が必要になります。一般的に20,000~30,000万円程度、床下や壁など修理が難しい箇所に水道管がある場合は50,000円程度と考えておくと良いでしょう。

水道管凍結・破裂時の修理費用(目安)

事故内容修理費用
水道管凍結8,000~15,000円(解氷作業費)
水道管破裂20,000~50,000円(水道管修理費)

水道管凍結は火災保険で補償できる?

水道管凍結は火災保険で補償できる?

火災保険は、自然災害や不測かつ突発的な事故に対して補償が適用されます。では、突然の寒波による気温低下などの自然現象が原因で、水道管が凍結・破裂した場合は火災保険が適用されるのでしょうか?

水道管が凍結・破裂した際の修理費用は、火災保険で補償できるケースがあります。しかし、全ての火災保険において、水道管凍結の被害をカバーしているわけではないので注意が必要です。

水道管凍結・破裂が火災保険で補償できるケースとできないケースをご紹介します。

【原則】水道管の修理費用は火災保険の補償対象外

水道管が破裂した場合の修理費用は、原則として火災保険で補償はされません。火災保険は基本的に自然災害による損害を補償するためのもので、寒波による水道管の凍結は対象外になるためです。

しかし、保険会社や契約内容によっては、火災保険から補償が受けられるケースもあります。次項で詳しくご紹介しましょう。

火災保険の特約があれば補償されることも

加入している火災保険に「水道管凍結修理費用保険金」の特約が含まれている場合、建物の専用水道管凍結の修理費用が補償される場合があります。なお、「水道管凍結修理費用保険金」の特約名称は保険会社によって異なるため、契約している保険会社ではどのような名称が使えわれているかは、ご自身で確認してください。

補償の条件や補償額は火災保険によって異なりますが、1回の事故に付き10万円を上限に修理代の実費が支払われるという契約が多いようです。

上記でご紹介した通り、水道管修理費用は8,000~50,000円程度であり、10万円を超えることはほぼありません。火災保険で修理費用をまかなうことができるため、実費で払わないといけないようなことはないでしょう。

他の補償は適用される?

他の補償は適用される?

「水道管凍結修理費用保険金」の特約がない場合、水道管凍結の際に申請できる火災保険の補償はあるのでしょうか?以下に詳しくご紹介します。

破裂及び爆発補償

水道管が破裂したのだから、火災保険の「破裂及び爆発補償」が適用されるとお考えの方もいるかもしれません。しかし、「破裂及び爆発補償」は水道管破裂には適用されません。

この補償は気体もしくは蒸気の急激な膨張による破壊・現象(ガス爆発など)を想定したものです。水道管の破裂は液体(水)が固体(氷)に変化する際の膨張によって生じるものであり、火災保険での「破裂」の定義には含まれません。

破損・汚損補償

破損・汚損補償は火災保険の特約の一つで、「保険の対象となる建物や家財に発生する不測かつ突発的な事故によって発生した損害に対して給付金が支払われるというものです。

水道管凍結の修理費用が補償の対象となるかどうかは、保険会社によって異なります。「水道管凍結修理費用保険金」の特約がなければ補償の対象外となる場合もありますので、あらかじめ保険会社に確認しておきましょう。

水道管の劣化による破損は火災保険の対象外

水道管破裂の原因が経年劣化である場合は火災保険の対象外となります。

賃貸住宅の場合は、水道管の劣化による破損は管理側(家主)の責任になります。責任を明確にするためにも、水道管が破損した際は家主や管理会社に連絡しましょう。

水道管凍結の被害に関係する補償

水道管凍結の被害に関係する補償

水道管凍結の被害に利用できるのは、凍結水道管修理費用保険金のみに留まりません。

  • 水漏れによって自室が被害を受けた時
  • 水漏れによって階下の部屋に被害を与えた時
  • 破損した水道管を取り替えた時

以上のようなケースにおいて、火災保険から給付金保険金が支払われる場合があります。

詳しくご紹介しましょう。

水濡れ補償

水濡れ補償

水道管破裂による漏水で室内に被害が及んだ場合、火災保険の「水濡れ損害補償」が利用できます。

水濡れ損害補償とは、水道管や湯沸かし器、スプリンクラー設備など、給排水設備の突発的な事故やトラブルにより、漏水や放水といった損害が生じた場合に給付金を受け取れるというものです。水道管破裂によって水がもれだし、壁やクロス、家具、家電が破損・汚損した場合には、水漏れ損害補償から給付金を受け取ることができます。

なお、水濡れ補償は自室以外の戸室で生じた事故による水漏れ被害も対象になります。ただし、事故を起こした住人が個人賠償責任保険に加入しているのであれば、そちらで補償してもらえる場合もあります。

また、賃貸の場合、物件の被害には借家人賠償責任保険が適用されます。

個人賠償責任保険

個人賠償責任保険

水道管凍結による水漏れの被害が階下に及んだ場合、損害を賠償する責任が生じます。その際に利用できるのが「個人賠償責任保険」です。個人賠償責任保険の補償範囲は広く、契約者以外の家族や、住宅外のトラブルにも適用されますので、加入していて損はないでしょう。

ただし、個人賠償責任保険は自動車保険の特約にも含まれている場合があります。火災保険との二重契約にならないよう注意しましょう。

借家人賠償責任保険

借家人賠償責任保険とは、家主から借りているもの(賃貸物件)に対し、偶発的な事故により損害を与えてしまった場合に補償が受けられるというものです。

賃貸住宅において水道管凍結による水漏れが生じ、床や壁が汚損してしまった場合は、借家人賠償責任保険による給付金で賄うことができます。個人賠償責任保険と同じく、火災保険の特約としてつけることができます。

残存物取片付け費用保険

残存物取片付け費用保険とは、損害を受けた家財の残骸を片付けるために必要な費用を補償するものです。破裂した水道管の処分や撤去にかかる費用はこちらで保険で賄うことができます。

残存物取り片付け費用保険は火災保険の特約としてつけるケースが多いです。補償額も保険会社によって大きなバラつきがありますので、確認しておきましょう。

水道管凍結時に火災保険を利用する流れ

水道管凍結時に火災保険を利用する流れ

水道管凍結時に火災保険を利用する流れは以下の4ステップです。

  1. 保険会社に連絡する
  2. 保険会社へ書類を提出する
  3. 保険会社による現地調査・審査を受ける
  4. 保険金を受け取る

基本的には保険会社の指示に従えば問題ありません。しかし、写真撮影や見積書などあらかじめ準備しておかなければならないものもあります。万が一の時のために、流れや準備物を把握しておきましょう。

1.保険会社に連絡する

まずは保険会社に水道管凍結による損害が生じたことを連絡します。

損害が発生した日時や状況などを尋ねられますので、まとめておきましょう。被害状況の写真を求められることも多いため、撮影しておくことも重要です。

2.保険会社へ書類を提出

加入している保険会社の指示に従って書類を準備します。保険会社によって必要な書類は異なりますが、保険会社から送付される申請書類に加え、見積書が必要になるケースがほとんどです。火災保険の手続きと並行して、水道修理業者に見積もり依頼をしておきましょう。

3.保険会社による現地調査・審査を受ける

書類提出後、損害保険登録鑑定人による現地調査を受けます。写真審査のみ行い、現地調査は省略されるケースもあります。

4.給付金を受け取る

保険会社による現地調査・審査の結果、損害が認められた場合は給付金が支払われます。目安としては2週間~1ヶ月で給付金を受け取ることができるでしょう。

水道管が凍結・破裂した時の対処法

水道管が凍結・破裂した時の対処法

水道管が凍結・破裂してしまった場合は、以下のような対処をします。

ゆっくり温めて氷を融かす

水道管が凍ってしまった場合は、ゆっくり氷を融かします。水道管にタオルを巻き、50℃程度のお湯をかけるようにしましょう。凍った部分にカイロを巻いたり、ドライヤーの温風を当てたりするのも効果的です。

すぐに水道栓をしめる

水道管が破裂した時は、すぐに水道栓を閉めて水漏れを防ぎましょう。

その後、破損箇所に配管補修用のテープやタオルを巻いて応急処置を行います。破損箇所をふさぐことで水漏れを止めるというわけです。また、水道管にゴミが入るのを防ぐことができます。

集合住宅の場合は大家さんや管理会社に連絡

集合住宅では、止水栓を閉めると全戸の給水が絶たれてしまうことがあります。対策を行う前に、大家さんや管理会社に相談しましょう。

水道管が凍結・破裂した時にしてはいけないこと

水道管が凍結・破裂した時にしてはいけないこと

続いて水道管が凍結・破裂した際にしてはいけないことをご紹介します。対応を誤ると、被害がさらに大きくなることがあるため、注意しましょう。

蛇口を無理に開く

水道管が凍結した際、水が出ないからと蛇口を無理に開くのは危険です。蛇口内のパッキンや水道管が破損し、さらに損害が広がってしまうためです。まずは落ち着いて氷を融かしましょう。

急激に温める

凍結したからといって、慌てて熱湯をかけるのはやめましょう。水道管の材質は多くの場合塩ビ管であり、高温に耐えることができないためです。

被害を受けた住民と直接交渉する

水道管が破裂し、階下にまで水漏れしてしまうほど被害が拡大した場合、階下の人に対して損害賠償をしなくてはなりません。

しかし、直接交渉をするとトラブルの元になるため注意が必要です。保険会社や大家さんに依頼して、間に立ってもらうようにしましょう。

水道管凍結を防ぐ方法

水道管凍結を防ぐ方法

水道管凍結による被害は火災保険での補償可能です。しかし、そもそも事故を防止できれば保険を利用する必要もありません。最後に、水道管凍結を防ぐための方法をご紹介します。

水道管を保温する

露出した水道管は特に凍結リスクが高いため、保温する必要があります。水道管に保温チューブや布、新聞紙、ダンボールなどを巻き付けると良いでしょう。

水抜きをする

冷え込みが予想される場合や、家を長期間空ける場合は水抜きをしておきましょう。

水抜きとは、凍結リスクが高い蛇口手前の立ち上がり管の水を完全に排出することです。

手順は以下の通りです。

  1. 水抜き線ハンドルを閉める
  2. 家の中全ての蛇口を開けて水を排出する  ※トイレのレバーを忘れないようにしてください。
  3. 水が出なくなったことを確認して全ての蛇口を閉める

不凍液を流す

水抜きが難しいトイレなどの水道管凍結を防ぐためには、不凍液を使うと良いでしょう。水抜き後、トイレタンクやトイレ内に不凍液を入れると凍結を防ぐことができます。

まとめ

まとめ

水道管凍結による被害と、火災保険で補償を受ける条件について解説しました。今回お話した内容をまとめると、以下のようになります。

  • 水道管が凍結すると水道管の破裂や水漏れといった損害が生じる
  • 水道管凍結の修理費用は火災保険の補償対象外になるケースが多い
  • 「水道管凍結修理費用保険」の特約があれば水道管凍結の修理費用が補償される
  • 自室が損害を受けた場合は「水濡れ補償」が利用できる
  • 他室に損害を与えた場合は「個人賠償責任保険」が利用できる
  • 水道管凍結時に火災保険を利用するためには、修理費用の見積もりと被害状況の分かる写真が必要

水道管が凍結すると甚大な被害が生じます。まずは水道管凍結防止に努めましょう。それでも凍結事故が起こってしまった場合は、契約内容に沿って火災保険の給付金申請を行いましょう。

火災保険の申請が難しいと感じる場合は、火災保険申請サポートを利用するのも一つの手段です。火災保険のプロフェッショナルが申請に必要な損害箇所の写真撮影や書類の作成を代行するため、面倒な手続きを自分で行うことなく、適切な給付金を受け取ることができます。

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