火災保険は塀やフェンスの破損も対象?給付金が支払われる条件と請求時の注意点を解説

火災保険の対象は建物や家財ですが、フェンスやブロック塀も補償されるため、破損があれば給付金を申請できます。
自然災害の影響や、当て逃げで塀やフェンスが破損したときは、早めに火災保険給付金を請求しておきましょう。

ただし、火災保険の適用には一定条件があり、フェンスの修理費も全額補償されるわけではありません。自分で火災保険給付金を請求すると、給付額を最大限まではもらえない可能性もあるでしょう。

そこで今回は、火災保険に塀やフェンスの修理費を請求できるケースや、請求時の注意点などをわかりやすく解説します。

目次

火災保険でフェンス(塀)の破損に給付金が支払われるケース

火災保険でフェンス(塀)の破損に給付金が支払われるケース

火災保険は建物の外構も補償されるケースが多いため、塀やフェンスの破損にも給付金が支払われます。
ただし、以下の条件を満たす必要があるので、給付金の対象になっているかどうか、保険契約書や取引約款を確認しておかなければなりません。

建物と付属物が補償の対象になっている場合

火災保険で塀やフェンスの破損を修理するときは、建物と付属物が補償対象になっている必要があります。
ブロック塀やフェンスなどの外構は建物付属物になるため、保険契約で建物のみ、または家財のみを補償対象にしている場合、給付金は支払われません。

一般的な火災保険は塀やフェンスの破損も補償されますが、保険契約によっては建物付属物が含まれていないので、保険証券を確認しておくとよいでしょう。

フェンスの破損原因が補償の対象になっている場合

フェンスの破損原因が補償の対象になっている場合

火災保険は補償の範囲を定めて契約するため、塀やフェンスの修理に給付金を請求する場合以下の破損原因に該当している必要があります。

補償の対象塀やフェンス破損の具体例
自然災害落雷による破損
台風や竜巻、突風などの風災による破損(最大瞬間風速が秒速20m以上)
雪の重みによる破損(雪災)
偶然な事故火災や爆発による破損
物体の落下や破裂による破損
車の接触や衝突などによる破損

自然災害は火災保険の主契約になっており、偶然な事故は自動付帯されているケースが一般的です。

例えば、冬に起こる雪害として、塀やフェンスが雪の重みで破損したら、火災保険の給付金が支払われるでしょう。また、塀やフェンスにスプレーなどで落書きされた場合も、火災保険で修復できるケースがあります。

さらに、車の衝突により破損した場合も、塀やフェンスは火災保険で修繕費用を賄うことができます。
ここで注意が必要なのは、塀やフェンスに衝突したことで被害を受けた自動車は、火災保険では修理不可能であることです。自動車は火災保険ではなく、自動車保険の補償範囲範囲のため、自動車で塀やフェンスに損害を与えた場合は、火災保険と自動車保険の両方を給付金申請しなければなりません。

フェンスの損害額が火災保険の免責金額を超える場合

火災保険で塀やフェンスの破損を修理する場合、修理費が免責金額を超えているときのみ給付金が支払われます。
免責タイプには、フランチャイズ方式とエクセス方式の2種類あります。

エクセス型フランチャイズ型
あらかじめ決められた金額を超えた分が給付金として支払われる損害額が20万円以上の場合、給付金が全額支払われる

なお、免責金額を高く設定すると毎月の保険料が低くなるため、必ずしもデメリットというわけではありません。

火災保険でフェンス(塀)の破損に給付金が支払われないケース

火災保険でフェンス(塀)の破損に給付金が支払われないケース

塀やフェンスが以下のような原因で破損した場合、火災保険で給付金は支払われません。
経年劣化や土圧の影響は判断が難しいため、専門的な調査が必要になるケースもあるでしょう。

経年劣化

塀やフェンスが経年劣化によって破損した場合、原則として火災保険で給付金は請求できません。
経年劣化は塀やフェンスの素材に影響されるので、以下の法定耐用年数がある程度の目安になります。

塀やフェンスの素材法定耐用年数
木製や金属製10年
樹脂製15年
スチール製20年
れんが造7~25年
土造や石造20~35年

なお、ブロック塀の鉄筋が建築基準法の基準より少ないなど、施工不良があった場合は、ひび割れによる破損が短期間で発生するケースもあります。
塀やフェンスの設置からある程度の期間が経過していると、「古いから仕方ない」と諦めがちですが、直接的な破損原因が経年劣化ではない可能性もあるでしょう。

故意の破損

火災保険では「故意の破損」を補償していないため、塀やフェンスを意図的に壊した場合は給付金が支払われません。
悪質な保険契約者は塀やフェンスをわざと壊し、不正に火災保険給付金を請求するケースがあるので、故意の破損は免責事由となっています。

また、塀やフェンスが老朽化しているにも関わらず、管理を怠ったために破損した状況であれば、給付金の請求は認められないでしょう。

地震による破損

地震による破損

塀やフェンスが地震によって破損した場合、火災保険で給付金は支払われないので注意してください。
地震や噴火、津波による損害は地震保険の補償範囲であり、火災保険の補償外です。また、地震保険に加入している場合でも、補償の対象は柱や屋根などの主要構造部に限られます。

土圧による破損

塀やフェンスが土圧によって破損した場合も、火災保険給付金は支払われません。
土圧とは、地下の構造物が地盤から受ける圧力を指しており、フェンスやブロック塀などが倒れないよう、施工時に測定されています。
ただし、強度不足の工事だった場合は地震の影響で土が盛り上がり、塀やフェンスが傾く、または倒れてしまうケースがあります。

土圧による破損は判定が難しいため、単なる目視ではなく、専門的な調査が必要になる場合もあるでしょう。

フェンス(塀)が壊れた場合の修理費用

フェンス(塀)が壊れた場合の修理費用

塀やフェンスの修理費用は以下のような相場になっており、素材別に金額が異なります。

塀やフェンスの素材10mあたりの修理費用相場
鋳物16~24万円程度
スチール16~24万円程度
ブロック18~28万円程度
木製24~40万円程度
アルミニウム20~32万円程度
樹脂28~48万円程度

強度不足のブロック塀は「控え壁」や鉄筋による補強が必要になるため、状況によっては10mあたりの修理費が40万円以上になるケースもあります。
また、ブロック塀の基礎をすべて撤去し、アルミフェンスに交換するときは、10mあたりの修理費が50万~100万円程度になるでしょう。

装飾を施してあるフェンスの修理や、塗装も含めて修理する場合も、一般的な相場より高くなります。

火災保険でフェンス(塀)を修理するまでの流れ

火災保険でフェンス(塀)を修理するまでの流れ

火災保険で塀やフェンスを修理する場合、損害発生から修理完了までは以下の流れになります。

給付金の受取りは早ければ請求から1ヶ月程度ですが、場合によっては3ヶ月程度かかるでしょう。

  1. 保険会社に連絡
  2. 修理業者から見積もりを取る
  3. 給付金申請用紙の記入と提出
  4. 保険会社による損害状況の調査
  5. 給付金の支払い
  6. 修理業者へフェンスの修理を依頼する

保険会社に連絡すると、火災保険給付金の請求用紙が送付されます。請求時に必要な添付資料なども案内されているので、書類にはすべて目を通しておきましょう。

塀やフェンスの修理はリフォーム業者や外構工事業者、ハウスメーカーに依頼できますが、各社ごとに費用が異なるため、必ず相見積もりを取ってください。

▼火災保険申請についてはこちらをご覧ください。

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火災保険にフェンス(塀)修理の給付金を請求するときの注意点

火災保険にフェンス(塀)修理の給付金を請求するときの注意点

火災保険給付金の請求には以下の注意点があるため、損害発生後の初期対応が重要です。
保険契約時と外構と現在の状況が異なる場合、給付金の請求が却下されるので、塀やフェンスの修理費をすべて自己負担しなければならないケースもあります。

修理前に必ず写真を撮る

自然災害などが原因で塀やフェンスが破損したときは、必ず修理前に写真を撮ってください。

ブロック塀などの倒壊には応急処置も必要ですが、ひとまず破損状況をそのまま撮影し、証拠を残しておかなければなりません。破損が著しい部分や全体写真など、あらゆる角度から塀やフェンスを撮影しておくとよいでしょう。

写真や罹災証明書がなければ、火災保険給付金の請求に応じてもらえないリスクがあるので要注意です。

フェンスの修理には自己負担も必要

火災保険には免責金額が設定されているため、塀やフェンスの修理には自己負担も必要です。塀やフェンスの修理費が免責金額を下回る場合、全額自己負担しなければなりません。

保険契約書を十分に読み込んでおらず、「給付金だけで修理できる」と勘違いされているケースがあるので注意してください。

物置は床面積に制限あり

物置は床面積に制限あり

塀やフェンスに車が衝突した場合、物置にも損害が発生するケースがあります。

物置は建物付属物になるため、基本的には火災保険の対象ですが、床面積が66㎡(約20坪)以上あると給付金の対象から外れます。床面積が66㎡以上ある物置であれば、「屋外明記物件特約」の付帯がない限り、火災保険給付金が支払われないので注意してください。

火災保険加入後に設置した付属物は給付金の対象外

火災保険加入後に設置した付属物が破損しても、給付金の補償はありません。

保険証券に記載されていないものは補償の対象外になるため、加入後に塀やフェンスを設置したときは、追加の保険契約が必要です。

火災保険の加入時期が古い場合、補償の範囲を忘れてしまい、DIYで塀やフェンスを設置するケースがあるので注意しましょう。

火災保険給付金の請求権は3年で消滅する

保険法第95条第1項により、火災保険の給付金請求権は3年間で消滅します。被害を発見したら、すぐに申請をしましょう。

保険会社の鑑定や修理費の見積もりを鵜呑みにしない

保険会社の鑑定や修理費の見積もりを鵜呑みにしない

保険会社の鑑定人は建築や構造計算のプロではないため、鑑定結果が必ずしも正しいとは限りません。

また、悪質なリフォーム業者などに塀やフェンスの修理を依頼すると、見積りとはほど遠い手抜き工事になる可能性があります。保険会社の鑑定や修理費の見積もりは鵜呑みにせず、必ず算出根拠を確認してください。

火災保険のフェンス(塀)修理に関するQ&A

火災保険のフェンス(塀)修理に関するQ&A

火災保険で塀やフェンスを修理するときは、以下のQ&Aを参考にしてください。

給付金の請求に疑問などがあれば、早めに解消しておきましょう。

火災保険でフェンスを修理すると保険料が上がる?

火災保険の仕組みは自動車保険と異なっており、給付金を受け取っても保険料は上がりません。

翌年以降も保険料の負担は変わらないので、塀やフェンスが破損したときは必ず給付金を請求しておきましょう。

火災保険はフェンスの当て逃げも給付金の対象になる?

火災保険はフェンスの当て逃げも給付金の対象になる?

当て逃げは「偶然の事故」に該当するため、火災保険給付金の支払い対象です。

ただし、基本的には相手の自動車保険で塀やフェンスを修理するため、火災保険の利用は相手がわからない場合に限られるでしょう。

火災保険給付金はフェンスの修理以外にも使える?

火災保険給付金には用途制限がないので、フェンスの修理以外に使っても問題ありません。

ただし、塀やフェンスの修理を放置すると、破損状況がさらに悪化し、車や通行人に重大な被害を及ぼす可能性があります。自分の過失で被害者が発生した場合、火災保険給付金の請求は認められないため、高額な治療費や慰謝料を支払わなければならないでしょう。

フェンスが倒れてけが人が出たときも給付金が支払われる?

自然災害が原因で塀やフェンスが倒れた場合、被害者に対する損害賠償責任は負いません。

ただし、通常求められる注意や管理義務を怠っていたときは、損害賠償責任を負う可能性もあります。なお、個人賠償責任保険に加入していれば、賠償金を保険会社が支払うため、治療費や慰謝料の自己負担はないでしょう。

隣の家のフェンスを壊した場合でも火災保険が適用される?

隣の家のフェンスを壊した場合でも火災保険が適用される?

隣の家の塀やフェンスを壊した場合でも、自然災害や偶然の事故であれば、火災保険給付金が支払われます。

ただし、「そちらの子供にフェンスを壊された」などと言われたときは、まず状況確認が必要です。
子供がフェンスを壊す瞬間を見ていたのか、相手の注意義務や管理責任に問題はなかったのか、判断材料を集めてから保険会社に相談してください。

保険会社の鑑定に納得できないときはどうしたらよい?

保険会社の鑑定に納得できないときは、以下の対処法を検討してください。

保険会社のカスタマーサポートに連絡すると、塀やフェンスの損害を再審査してもらえる可能性があります。再審査でも結果が変わらないときは、1級建築士が在籍しているサポート業者に相談してみましょう。

サポート業者の調査は精度が高く、給付金の請求手続きも代行してくれるので、十分な費用対効果を期待できます。

また、そんぽADRセンターは中立的な第三者機関になっており、保険会社との紛争解決をサポートしてもらえます。
ただし、そんぽADRセンターは被害者の味方ではなく中立な立場のため、損害の立証や、給付金請求の書類収集は自己対応しなければなりません。

火災保険を上手に活用してフェンス(塀)を修理しよう

火災保険を上手に活用してフェンス(塀)を修理しよう

火災保険は塀やフェンスにも適用されるので、破損したときは早めに給付金を請求しておきましょう。
ただし、保険会社の鑑定が必ずしも正しいとは限らず、場合によっては給付金を引き下げられる可能性があります。

鑑定結果に納得できないときは、専門性の高い調査人に塀やフェンスをチェックしてもらうべきでしょう。

塀やフェンスの修理代は却下されるケースも珍しくないので、火災保険給付金の請求に困っている方は、ぜひ修復ナビの無料診断を活用してください。

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